CASE 04

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審美性と予知性の高いコンポジットレジン修復の追求

ーバイオクリアーマトリックスシステムの臨床使用ー

日本大学歯学部保存学教室修復学講座 宮崎 真至 教授

はじめに

コンポジットレジン修復において、その主要な使用材料は接着システムとともに修復材料であるコンポジットレジンとなる。窩壁との適合性や付形性などを考慮すると、修復操作における補助器具である付形子であるマトリックスの使用は、修復物表面性状を整えるとともに辺縁適合性を高めるために有用である。
コンポジットレジン修復を行うにあたり、修復物表面形態の付与あるいは表面性状の向上を目的として各種のマトリックスが用いられている。適切なマトリックスを選択することで、チェアタイムは確実に短縮するとともに、審美性とともに予知性の高いコンポジットレジン修復が可能となる。

図1 Dr. Clarkのハンズオンコースを受講した際のスナップ写真。温かい人柄とともに、歯科臨床に対する強い情熱を感じたものである。バイオクリアーマトリックスシステムの使用法に関しては、懇切丁寧にご指導いただいた。

バイオクリアーマトリックスシステム

このマトリックスシステムは、米国ワシントン州タコマの開業医であるDr. David Clark が考案したものである。このシステムは、基本的にはマトリックス、ウェッジおよびコンタクト調整用のメタルストリップから構成されている。このシステムを用いることによって、これまで審美的なエマージェンスプロファイルを付与することが困難であった症例にも対応が可能となっている。すなわち、ⅢおよびⅣ級修復はもちろん、エマージェンスプロファイルを整えることでブラックトライアングルの改善を諮ることも可能である。また、歯間離開症例では専用のマトリックスを用いることで、効果的であるとともに効率よく修復操作を行うことができる。

1)バイオクリアーマトリックスシステム

修復処置の対象となる歯および欠損部の大きさ、あるいはカウントゥアの程度に合わせてマトリックスを選択可能である(図2)。その厚さは50μmで、歯頸側は隣接面の歯肉溝に挿入しやすい形態をしており、しかも挿入が容易になるようなタグ(positioning tag)が付与されている(図3)。

図2 バイオクリアーマトリックスは、使用する歯のサイズや部位によって、わかりやすいIDが付与されており、症例によっての選択を容易としている。

図3 バイオクリアーマトリックスは,隣接面への挿入が容易になるようにタグが付与されており、ポケットに挿入ができるような3次元的な形状を有している。

2)バイオクリアーダイヤモンドウェッジ

歯間部への挿入が容易で、挿入後には隣接面のカウントゥアに密着できる形態を有している(図4)。先端部は、ダイヤモンドカットとよばれる断面が三角形の形状を呈し、歯間部への挿入時にはこれを閉じ、挿入後はこれが開放することによって歯間乳頭を傷つけることなく隣接面に密着することができる。グリップハンドルは、ウェッジの装着時に把持しやすい形状で、フレア状の分岐部にあたるファーカルフレアは、深部カリエスの隣接面最深部に適合する設計となっている。

図4 バイオクリアーダイヤモンドウェッジは、隣接面への挿入が容易になるようにタグが付与されておりポケットに挿入ができるような3次元的な形状を有している。

3)コンタックEZ

コンポジットレジン修復前の歯面の活性化、マトリックス挿入を容易にするためのコンタクトの調整ならびに余剰部のトリミングに用いられる(図5)。ブラックは、厚さが0.06mm、片面ファインダイヤで、コンタクトの修正などに用いられる。オレンジは、厚さが0.05mm、片面ファインダイヤ上下ノコ刃で、非常にきつい歯間部にも挿入しやすく、歯間分離をして他のストリップスを挿入しやすくする。ホワイトは、厚さが0.035mm、ダイヤ粒子なし、上下弱ノコ刃で、薄いため、歯間部を安全にカットすることができる。ブルーは、厚さが0.065mm、ダイヤ粒子なし、上下ノコ刃、ホワイトより厚く丈夫のため、強固な歯間部のカットができる。グレーは、厚さが0.05mm、片面ウルトラファインダイヤで、歯間隣接面の最終研磨に用いられる。

図5 コンタックEZを用いることによって、歯面の活性化、マトリックス挿入を容易にするためのコンタクトの調整ならびに余剰部のトリミングを行うことができる。

バイオクリアーマトリックスシステムの臨床応用

患者は、前歯部の齲蝕処置ならびに審美性の回復を主訴として来院した(図6-1)。コンタックEZを用いて、隣接面エナメル質の表面を清掃するとともに、歯面処理剤が効果的に作用できる状態にする(図6-2)。窩洞外形は、必要最小限の歯質切削にとどめるとともに、可及的に円滑な曲線とする(図6-3)。バイオクリアーマトリックスの縁端部を、歯頚部に適合するような形態に調整する(図6-4)。タグを持ってマトリックスを隣接面に適合させ、適切なカウントゥアが得られることを確認する。次いで、下部鼓形空隙にはダイヤモンドウェッジを挿入してマトリックスを固定する(図6-5)。接着操作に引き続き、フロアブルレジンとユニバーサルペーストを用いてコンポジットレジン修復を行う。適切な形態修正と研磨を行うことによって、封鎖性に優れた審美的修復が、効率的に行うことができる(図6-6)。

図6-1 初診時

図6-2 歯面の活性化 ※※レッドは非売品です。
コンタックEZは図5の5種類です。

図6-3 窩洞形成終了

図6-4 マトリックスの調整

図6-5 マトリックス装着とウェッジの挿入

図6-6 修復終了

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