CASE 06

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動的矯正治療後に認められた前歯部ブラックトライアングルへのコンポジットレジン修復の実際

高橋歯科矯正歯科 高橋 正光 先生

矯正歯科臨床において避けられないDisadvantageの1つにBlack triangleの発現が挙げられる。Black triangleは矯正治療後の審美障害の1つとなっているが、それを防ぐ方法は現実的には無いと言っても過言ではなく、発現後の対処方法としては、①Tarnow らの報告(表1) 1) に基づきコンタクトポイントの位置を歯頚側に移動する(IPRやラミネートベニアなどの歯冠補綴)、②歯周外科的再生療法、等が挙げられる。

本稿では「バイオクリアーマトリックス」を応用することによりBlack triangleを改善した例について報告する。「バイオクリアーマトリックス」の長所としては最低限の侵襲(MI: Minimum Intervention)で歯冠の形態修正が容易であり、適応部位に制限がない(例えばラミネートベニア形成が困難な下顎前歯部にも応用可能)などが挙げられる。

隣接面歯槽骨頂からコンタクトポイント最下点までの距離歯間乳頭再建率
5mm未満100%
5mm98%
6mm56%
7mm以上27%

表1:Tarnowの分類:隣接面歯槽骨頂からコンタクトポイント 最下点までの距離と歯間乳頭再建率

「バイオクリアーマトリックス」の使用方法

  1. 目的とする隣接面部を「コンタックEZ IPR用ストリップ」を用いて 研磨を行った後に、 エッチング、ボンディングを行う。
  2. 「バイオクリアーマトリックス」を鋏で歯頸部の形状(カーブ)に沿うように加工する。
  3. フロアブルレジンを「バイオクリアーマトリックス」を圧接して、光重合させる。
  4. 通法により形態修正および研磨を行う。

症例1

20歳 女性。動的矯正治療後、Black triangleが上下顎前歯部に認められた。

図1:動的矯正治療終了後 口腔内所見

図2:「コンタックEZ IPR用ストリップ」にて隣接面研磨

図3:エッチング

図4:バイオクリアーマトリックスの挿入

図5:フロアブルレジンの充填

図6:術後上顎口腔内所見

図7:術後口腔内所見(下顎術後)

症例2

28歳 女性。動的矯正治療後、Black triangleが下顎前歯部に認められた。
両症例とも、患者の希望により、最低限の侵襲でということで、「バイオクリアーマトリックス」を用いて歯冠形態の修正を行った。

図8a:動的矯正治療終了後 口腔内所見(右側面観)

図2:「コンタックEZ IPR用ストリップ」にて隣接面研磨

図3:エッチング

図4:バイオクリアーマトリックスの挿入

図5:フロアブルレジンの充填

図6:術後上顎口腔内所見

図7:術後口腔内所見(下顎術後)

まとめ

「バイオクリアーマトリックス」は、今まで困難とされてきた歯頚部からコンタクトポイントまでの立ち上がりの形態付与が比較的に容易であり、患者への負担が少なく高い審美性を担保する材料であると言える。

参考文献
1)Tarnow DP, Magner AW, Fletcher P. The Eff ect of the distance from the contact point to the crest of bone on the presence or absence of the interproximal dental papilla. J Periodontol 1992; 63: 995‒996.

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