CASE 03

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バイオクリアー ブラックトライアングルキットを用いた前歯部審美修復症例

たかデンタルクリニック 佐藤 貴彦 先生

前歯部Ⅲ級充填と共にブラックトライアングルの改善を同時に行った症例

長期にわたる矯正治療の後や歯周病の進行に伴い、歯間乳頭の退縮および平坦化で出来た空隙いわゆる“ブラックトライアングル”に遭遇することは決して珍しくはない。また、患者においては主訴の治療が完治した後のこの状況を改善したい、隙間を埋めたいと訴えることも往々にしてある。治療方法としては、結合組織移植による歯間乳頭再建術や補綴治療によるembrasure controlが考えられるが、Minimal Interventionの観点から第3の方法としてダイレクトボンディングが選択されることもある。しかし、小さな隙間を埋めるだけでなく、適合精度に優れ、さらに天然歯のような形態を再現することは決して容易ではない。今回ご紹介するBIOCLEAR社製Black Triangle Matricesは、下部鼓形空隙に専用ゲージを挿入し、隙間の大きさを計測することにより最適な大きさ、最適なプレカーブを有したマトリックスを4種類の中から選択することが出来る。
マトリックスは、歯質との歯頚部適合精度に優れていることから、充填後の調整も少ない。また、形態的にはラインアングルの再現性もあることから歯頚部から切縁に向かって移行的な形態付与を期待できる。
今回、前歯部Ⅲ級充填と共にブラックトライアングルの改善を同時に行った症例を供覧したい。術前(図1)

図1

形成およびラバーダム防湿後(図2)。接着修復においては、口腔内の湿潤状態や歯頚部からの浸出液をコントロールする必要があることから、ラバーダム防湿は必須である。
専用ゲージを用いて近心下部鼓形空隙の大きさを計測し、最適なマトリックスを選択する。選択したマトリックスを試適し、適合のチェックを行う。その後、通法に従いエッチング、ボンディング、充填操作に移行する(図3、4)。同様に遠心下部鼓形空隙も専用ゲージで計測し、マトックスを選択、試適する。その後充填操作を行う(図5、6)。
充填終了後に適合、形態を確認する(図7)。マトリックスは75µmの厚みがあることから、充填時にコンタクトが空かないように気を付ける必要がある。
充填後は、歯質との界面に段差が出来ないように調整し、形態修正を行う。その後、表面性状を付与し、研磨操作に移行し、完成となる(図8)。
ブラックトライアングルという審美性を目的とした治療ではあるが、このマトリックスを用いることで、審美性はもとより清掃性や長期維持・安定のための適合性も考慮されている。また、個人のセンスや感覚に囚われることなく、システマチックに充填操作が行えることは、再現性のある安定した結果を患者に提供できることから、今後是非とも取り入れてほしいと思う。

図2

図3

図4

図5

図6

図7

図8

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