CASE 04

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バイオクリアーダイヤモンドウェッジの臨床例

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野助教
保坂 啓一 先生

2級コンポジットレジン修復は、国内外で高い長期予後成績が報告されているものの、実際行うとなると理想的な解剖学的形態と隣接面コンタクトを修復物に付与することは難しく、苦手にしている先生も少なくないようである。2級コンポジットレジン修復では、2級マトリックスシステムの使用が必須である。2級マトリックスマトリックスシステムの構成要素であるウェッジ(他に、マトリックスバンド、マトリックスリングで構成される)は、材質として木製・プラスチック製(透明/非透明)があり、サイズを選んで下部鼓形空隙に挿入して使用する。ウェッジの使用は歯間分離のためだけでなく、歯肉側マージンにおけるマトリックスと歯質との適合性を向上させるため重要である。ただし、実際使う場面では、ウェッジの調整が必要だったり、持ちにくかったり、挿入後にずれることがあったりと、限られた治療時間の中で、術者を煩わせることがある。

今回、モリムラから新しく発売されたダイヤモンドウェッジ(バイオクリアー社)を使用すると、独特な形態と構造(図1)によって、挿入後にずれにくく、またマトリックスをマージンにしっかりと圧接するので、適切なコンタクト圧を持ち、はみだしがなくフィットのよいコンポジットレジン充填が可能となる(図2)。マトリックスバンドの把持がしっかり行われるので、マトリックスリングを使用しなくても充填を終了できるケースも少なくない(図3,4)。

他のウェッジにはない、このウェッジの特徴は、ウェッジ先端部のダイヤモンド状にカットされた空隙によって、歯間部への挿入時に僅かに変形し、挿入後にはその形状によって抜けが防止されることである。ダイヤモンドウェッジの使用上のポイントは、ウェッジ本体の把持のためのグリップハンドルをしっかりピンセットで持ちながら歯間部に挿入し、後ろの四角い部分を一定の圧力以上で押し切ることである。ダイヤモンドウェッジは、2級コンポジットレジン修復の成功をより確実なものとするだろう。

図1
バイオクリアー社ダイヤモンドウェッジ(下から、スモール、ミディアム、ラージ、エクストララージ、ディープカリエス)の独自形状。ディープカリエスではファーカルフレアが付与されている。ダイヤモンドカットにより先端がたわみ下部鼓形空隙への挿入を容易にする。挿入後はその形状により“抜け”が防止される。筆者はミディアムをよく使用する。

図2-1
40歳女性。インレー脱離を主訴に来院。患者と相談の上、コンポジットレジン修復を行うこととなった。

図2-2
う蝕検知液を用いてう蝕除去後、ラバーダムを装着。ダイヤモンドウェッジおよびリングを用いて隔壁および歯間分離を行った。一般的な形状のウェッジでは舌側から挿入するのが第一選択となるが、ダイヤモンドウェッジは独自形状により、頬舌側どちらから挿入してもマトリックスバンドのマージンへの良好なフィットが得られる。

図2-3
接着操作を行う。ダイヤモンドウェッジは、歯間部に一度挿入するとずれにくいので、ラバーダムシートにテンションがかかっても動かない。

図2-4
接着操作後の窩洞。

図2-5
フロアブルコンポジットレジンを用いて充填。

図2-6
充填直後。

図2-7
研磨終了後。

図3
多くの症例では、マトリックスバンドとダイヤモンドウェッジのみで2級コンポジットレジン修復を終えてしまうことができるだろう。歯間部下部鼓形空隙へ挿入した後、ダイヤモンドウェッジの“抜け”や“ズレ”は他のものと比べて少ない。

図4
ディープカリエスのファーカルフレアは上顎第一小臼歯近心の陥凹したマージン形態にも追随する。(プラスチックマトリックス併用)

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